認知症の高齢者 ヒートショックに注意!…冬の過ごし方のポイントは?

November 28, 2022

 寒さが増し、体調を崩しやすい時期になりました。暖房器具をしっかり使い、適切な服を選ぶことが生活する上で大切です。認知症で苦手なことがあっても、自分で工夫したり、周囲が気にかけたりすることで、この冬を快適に過ごせるよう、ポイントを確認します。(小池勇喜、阿部明霞)

リモコン操作 図入りで説明…エアコン

「暖かい風が出るのは、どのボタンだい?」

 11月下旬、茨城県北茨城市の菊池みねさん(82)は、ケアプラン作成を担当する株式会社「夢なかま」のケアマネジャー、加藤佳代さん(54)の訪問の際にエアコンのリモコン操作の方法を尋ねた。

 「暖房は、このオレンジのボタンを押してくださいね」と、加藤さんはボタンの色の違いでわかりやすく説明。温度設定のやり方なども一緒に確認した。

 高齢になると、機械の使用が苦手になるケースがある。特に、エアコンや暖房器具のような一年中使い続けることのない家電は、間が空くことで操作を忘れたり、使うことを思いつかなくなったりしがちだ。リモコンなどの小さな字が見にくくなるという問題もある。

 使い方や適切な設定温度を改めて確認して、冬場に暖房器具を活用できないような事態は避けたい。

 

「リモコンのどのボタンを押せばいいのか、家族やヘルパーさんに図入りで書いてもらっておき、操作する時に確認する方法もある」と加藤さんは話す。

 菊池さんは、大切な物をしまった場所を忘れてしまうことが時々あるという。リモコンがなくならないように、居間の机の上など、いつも置く場所を決めておくのもよいだろう。

 

高齢者のヒートショック】入浴中の事故を防止する7つの対策 - HOWAGROUP:医療 介護 福祉の豊和グループ

 

 

冬物 取りやすく整理…服装

 日々の服装を適切に選ぶことも大切だ。

 神奈川県鎌倉市内で一人暮らしをする認知症の女性(87)は、家の中でじっとしているより活動する方が好きだという。デイサービスに週3日通い、他の日も友達に会ったり、買い物をしたりと外出の機会は多い。

 でも、「日中の暖かさにつられて、コートなど防寒具を忘れて出かけてしまうことがある」という。朝晩、かなり冷え込む日もあるため、かかりつけ医には「肺炎などになる恐れがあるから、外出時の服装に気をつけて」と言われている。

女性は「一人で生活しているから、自分で気をつける。寒ければ、襟巻きとか着る物で調節して出かけようと思う」と意識している。

 ただ、認知症の症状で、暑さ、寒さを感じにくくなる場合もある。近くに住む女性の娘(49)が訪ねると、肌寒く感じるような気温でも窓が開いていたり、薄手の服を着続けていたりと、「寒くないのかな」と心配になる場面もあるという。

 そこで、女性の娘は、季節に合わなくなった衣服を押し入れの上の方に片付けた。冬用の衣服は女性が使いやすいようにと、「セーター」「カーディガン」などとラベルを付けたベッド下の収納に整理して入れた。

 「母が自分で気づけないことや用意できない物は、時期を見て家族が調えて、安全に過ごせるようにしている」という。

服装不安ならサポート受けよう…専門家の助言

防寒を分かりやすく

 冬を過ごす際のポイントを「認知症の人と家族の会」副代表理事で、川崎 さいわい クリニック(川崎市)の杉山孝博院長(75)=写真=に聞いた。

 寒い季節は外に出るのがおっくうになって、家の中にこもりがちです。体を動かし、人との交流を持つためにも、無理のない範囲で外出を続けるのがよいと思います。その際には、マフラー、手袋などの防寒対策をしっかりしてください。

 うまく服装を調節できるか自信がない人は、家族やヘルパーに何を着るか一緒に選んでもらうなどサポートを求めましょう。

 認知症では、できないこと、気づけないことも出てきます。家族など周囲の人が、季節に合った衣服や寝具にそっと交換するといった配慮も必要です。

 ただ、どんなに暖かい服を用意しても、真冬に薄着でいる人もいます。そんな時、家族が厳しく注意してばかりいると、本人も嫌な思いをします。もちろん、程度にもよりますが、体調を崩さない範囲なら、好きにしてもらった方が混乱しないで穏やかに過ごせる場合もあります。柔軟な対応が必要だと思います。

 これは高齢者全体への注意点になりますが、急な寒暖差で血圧が上下し、体調不良につながる「ヒートショック」が心配です。暖房の利いた部屋から10度以上温度が低い浴室、脱衣所、トイレなど寒い場所へ行く際は要注意です。お風呂の場合、お湯の温度をあまり高くしないことや、入浴前に浴室や脱衣所を暖めておくことが対策になります。

 年末年始でふだん利用している訪問介護やデイサービスが休みになったり、久しぶりに家族と一緒に過ごしたりすることもあると思います。認知症の人は、生活のリズムが変わることによって、混乱してしまうこともあります。

 大切なのは、本人が「ここにいても大丈夫」と思えること。安心してもらえる環境を整えるために、どこにいるのか、誰といるのかといったことを優しく丁寧に伝えてください。

「冬は、お風呂で倒れてしまう人が多いから、入る前に浴室を暖めましょう」

 茨城県かすみがうら市の女性(90)宅で、居宅介護支援センター「センチュリー石岡」のケアマネジャー、村山知彦さん(43)が、浴室に付いている暖房機能のボタンを押してみせた。

 暖房による温度の調整は浴室や脱衣所でも大切だ。温かい湯船とその周辺の大きな温度差で体調不良が起きる「ヒートショック」の心配があるからだ。

 女性は認知症や筋力低下で要介護2。週4日利用しているデイサービスで入浴する場合は職員が見守ってくれるが、「お風呂に入るとぐっすり眠れるから」と一人暮らしの自宅でも入浴することがあるという。

 村山さんは一緒にボタンの位置を確認し、「入る前に『暖房』を押す」と繰り返した。念のため、ボタンの近くの壁に、「お風呂をくむ前に『暖房』を押して下さい」と貼り紙もした。

 浴室に暖房機能が付いていない場合は、シャワーでお湯を出し続けるなどして湯気で暖める方法もある。脱衣所向けの暖房器具も市販されている。

 村山さんは「自宅でお風呂に入る人は、浴室や脱衣所を暖めてしっかりヒートショック対策をしてほしい。一人暮らしなどでは、気分が悪くなった時に気付いてくれる人がいないケースも考えられるので、デイサービスを利用しているなら、そこで入浴するのが安心だと思う」と話す。

こまめな水分補給 乾燥する冬も大切

 「こまめな水分補給」は夏の熱中症対策でよく耳にしますが、乾燥しやすい冬も必要だそうです。気づかないうちに体の水分が不足する「隠れ脱水」を防ぐためです。今回取材した女性は、目に付きやすい枕元にペットボトルを置き、「寝る前に一口、トイレに起きたら一口」と心がけているそうです。

 「重ね着」にも注意が必要だと聞きました。厳しい寒さでついつい着込み、下着からコートまで10枚以上というケースもあるそうですが、「体が動かしにくくなって、転倒のリスクが高まる」(「夢なかま」の加藤さん)とのこと。やはり、適切な暖房の使用が大切だと感じました。(小池)

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