年末年始休診のお知らせ

その他の投稿
ゲップは胃や食道の空気が排出される生理的な現象で、それ自体は問題ありません。しかし、何らかの病気の症状として頻繁にゲップが起こることもあります。最近は、うつや睡眠障害との関連も指摘されています。ゲップの予防法や対処法について、大阪公立大学大学院医学研究科消化器内科学教授の藤原靖弘先生に伺いました。 「ゲップ」はなぜ起こる? ゲップは、胃や食道の空気が口の方へ逆流する現象です。一般的には、食事と一緒に飲み込んだ空気が溜まったときや、炭酸飲料を飲んだ後などにゲップが出やすくなります。飲み込んだ空気が胃に溜まると、胃の上部(胃底部)が広がり、胃と食道の間をつなぐ下部食道括約筋が開いて、空気が胃から食道に上がります。上がってきた空気によって食道が膨れて上部食道括約筋も開き、ゲップとして排出されるというメカニズムです。 <胃から出るゲップのメカニズム> また、20年ほど前から、食道から出るゲップもあることがわかってきました。横隔膜が変則的に動くことで、下部食道括約筋が閉じたまま上部食道括約筋が開き、食道に空気が入ります。この空気は胃には入らず、そのまま食道からゲップとして出されます。 <食道から出るゲップのメカニズム> 近年、専門的な研究を行う大学病院などでは、食道の内圧測定や電気抵抗の波形をモニタリングする検査などで、ゲップの回数やパターンを調べられるようになっています。健康な人であっても、どちらのパターンのゲップも起こり得ますが、何らかの精神疾患が背景にある場合、食道から頻回にゲップが出る現象が多く見られるようです。 頻繁なゲップは病気のサインかも? ゲップは誰にでも生じる生理的現象ですが、多く出る場合には病気の可能性も考えられます。代表的なのは、機能性ディスペプシアと逆流性食道炎です。 機能性ディスペプシアは、検査をしても炎症や潰瘍などの異常がないにもかかわらず、胃の働きが低下することによって胃痛や胃もたれ、腹部膨満感などの症状を起こす病気です。ゲップも症状の一つとしてよく見られ、ゲップが多い人ほど、この病気の頻度も高くなるという相関が見られます。 逆流性食道炎は、文字通り胃の内容物が逆流することで、食道に炎症が起こる病気です。空気が逆流してゲップが出やすくなりますが、ゲップが出てもゲップだと自覚しない人もいます。このとき胃液も一緒に逆流することから、胃酸によって食道の炎症が起きやすくなり、胸焼けなどの症状も起こるためです。 うつや睡眠障害、ストレスとゲップの関係 さらに、最近の疫学調査では、ゲップの多い人は不安やうつ、睡眠障害のレベルも高いことが明らかになりました。原因はわかっていませんが、機能性ディスペプシアや逆流性食道炎を含む機能性消化管疾患を持つ人は、外部からの刺激に過敏になって不安やうつを併発するケースが多いことが知られています。こうした疾患では、脳と消化管が相互に関連し、影響しあっていることも知られており、これも背景の一つと推測されます。 また、熟睡しているときにゲップは起こりませんので、中途覚醒するような睡眠の浅い人がゲップをすることによって中途覚醒してしまう、というような悪循環に陥っている可能性があります。 なお、無意識のうちに大量の空気を飲み込み、それがゲップや腹部膨満感などの不快感として現れる「空気嚥下症(呑気症:どんきしょう)」という病気もあります。胃や食道の病気ではなく、緊張や不安などの精神的ストレスが影響して空気を飲み込んでいる場合が多いようです。 煩わしいと感じたら消化器内科へ ゲップは誰にでも起こる生理現象ですから、どのくらい出るようになったら医療機関を受診すべきかという判断は難しいものです。医学的には、1日14回以上のゲップが病的なものと定義されていますが、これにとらわれず、会話中にもゲップが出る、頻繁にゲップが出て外食できないなど、生活の質に影響があり、煩わしいと感じたら消化器内科を受診しましょう。 機能性ディスペプシアや逆流性食道炎と診断された場合は、胃酸を抑える薬や胃の動きを促す薬、漢方薬など症状に合わせた薬物治療を行います。食道からのゲップが多い場合は、薬物治療ではなかなかゲップが減らないケースも見受けられますが、腹式呼吸(息を吸ったときにお腹が膨らみ、吐いたときに凹む呼吸法)の訓練を行うことで改善することがあります。 日常生活でゲップが気になる場合は、ゆっくりよく噛んで食事をすることを心がけましょう。早食いだと飲み込む空気の量が多くなりがちで、ゲップが出やすくなります。炭酸飲料も控えめにするとよいでしょう。空気が溜まっているときに前かがみの姿勢で腹圧がかかると、空気が逆流しやすくなる可能性がありますので、よい姿勢を保つことも一つの方法です。 また、日常的に舌の先を上の歯の裏側あたりに当てて、噛みしめないようにすると、ゲップが出にくくなります。ただし、病気が関連している場合を除けば、ゲップは体の生理的な反応です。状況にもよりますが、過度に気にしたり我慢したりするよりも、「出せるときに出す」と考える方が、精神的ストレスも少なく、体も楽に過ごせるでしょう。
日本の「梅雨」は、気温が上がるとともに湿度を感じるようになり、いわゆる「不快指数」が高くなる時期です。まだ真夏ほどの暑さではありませんが、この時期から十分に注意したいのが「熱中症」です。 熱中症対策として最初に思いつくのは、水分補給ではないでしょうか。実のところこまめな水分補給は、熱中症予防だけでなく、日々の体調管理に大きく関わっているのです。 体内の水分量とその収支 また、体内の水分量は、摂取と排泄により一定に調節されています。例えば(比較的穏やかな環境で普通に生活している)体重70kgの成人男性では、1日のうちに2.5Lの水を摂取し、排泄するとされています。 体の調子は、入る水分と出る水分が一定に調整されていることでうまく整えられているため、このバランスが崩れると、体の不調をきたします。例えば、気温が高くなると汗をかくため出る水分が多くなります。出る水分と同じだけの水分が入らないと(補給できないと)、「脱水」の状態になります。 水分が足りないとどうなる? たかが水と思われるかもしれませんが、人は水があれば、食べ物が無くてもしばらくは生きながらえることができます。一方で、体内の水分量の5%を失うと脱水症状や熱中症の症状が現れ、10%を失うと筋肉の痙攣や循環不全が起こり、20%が失われると人は死に至ります。のどの渇きは、1%程度の水分が失われると感じるようになり、既に「脱水」と同じ状態になっているといわれています。 脱水は、血液中の水分も減少させている状態であり、血液がドロドロ状態になっています。ドロドロの血液は血管内に「血栓」を作りやすくしますが、脳血管を詰まらせてしまうことで起こるのが脳梗塞、冠状動脈を詰まらせてしまうことで起こるのが心筋梗塞です。 こうした疾患は冬に多く発生すると思われがちですが、実は暑い季節の脱水が要因となり発症することも多いのです。特に夏は寝ている間にもたくさんの汗をかきますし、血栓ができやすい状態なのです。 例えば、リンゴのすり下ろしを想像してください。りんごをすり下ろすと、水分だけの部分と、すり下ろされた固形のリンゴを多く含む部分とに分かれます。このうち固形のリンゴを多く含む部分を、脱水により濃度が高くなった血液と仮定し、ストローを血管に見立てたとします。固形のリンゴを多く含む部分は、ストローを太くしないと(血流量を増やさないと)飲めません。また細いストローでは、吸引力を強くしても(血圧を高くしても)、ストローの中に固形のリンゴが残ります。これが血栓です。 どのくらいの水分をどのように取ればいい? 例えば前述の例なら、70㎏の成人男性は飲料として1.2Lの水分が体に入ってきている計算です。この数字を目安に、汗によって出てしまった量に見合った水分を摂取する必要があります。しかし、水分を摂取してもそれが体に浸透するのに20分ほどかかります。また、一度にたくさんの水分を摂っても、体はうまく吸収することができません。つまり、水分はこまめに少しずつ、のどが渇いたと感じていなくても意識的に摂ることが大切なのです。 厚生労働省では「健康のために水を飲もう」推進運動として、就寝中の水分不足に備えて、夜寝る前と朝起きた後、それぞれコップ1杯ずつを飲むことを推進しています。枕もとに水分を置いておくのも良いでしょう。 そのほか特に水分補給が必要とされるタイミングとして、スポーツ中及びその前後、入浴前後が挙げられています。夏の日中など汗をたくさんかいた際には、水分補給はもちろんですが、塩分などの電解質の補充も忘れないようにしましょう。注意点として、アルコールや多量のカフェインを含む飲み物には利尿効果があるため、かえって脱水、血液ドロドロを招くことになります。こうした飲み物では期待する水分補給はできないことを知っておく必要があります。
慢性的な冷えは健康の大敵 加齢に伴い、体が冷えやすくなる。慢性的な冷えは健康の大敵だ。運動や食事など生活習慣を見直し、体を温める「温活」を始めてみては。 手足が冷えて寝付きが悪い 大分県の男性(74)は数年前から、布団の中で手足などが冷えて寝付きが悪くなった。毎日しっかり入浴しているが、就寝時には冷えてしまうという。「若い頃は冷え性ではなかった。年を取ったから仕方ないのだろうか」と悩む。 高齢になるにつれ、冷えに悩む人が多くなるようだ。厚生労働省の国民生活基礎調査(2019年)では、手足が冷える自覚症状のある人は、1000人あたり女性が31人、男性は14人。65歳以上では女性60人、男性38人となり、75歳以上に限定すると、それぞれ80人、53人まで増える。 筋肉量の低下が冷えに関係する 内科医で冷え性に詳しい石原新菜さんは「高齢者の冷えは筋肉の衰えによるところが大きい」と指摘する。筋肉は体温維持に大きな役割を担っているが、筋肉量は20代がピークで、70代ではその4割まで減少するという。若い世代では手足の先が冷たくなる末端型が多いが、高齢になるにつれ、下半身全体や体の中心まで拡大していく。 冷えを甘く見てはいけない 冷えが慢性化すると、肩こりや腰痛に悩むほか、風邪を引きやすくなったり、病気からの回復が遅れたりする。「特にこの2年ほどは、コロナの影響で外出を控えたためか、筋肉量が減少し、冷えに悩まされる高齢者が多い。健康維持のためにも温活を心がけて」と石原さんは話す。 温活って具体的にはどうするの? まずはウォーキングから 筋肉量を維持するには、日頃の運動が大切だ。石原さんは、毎日20~30分のウォーキングを提案する。腕を振り、やや早歩きする。自宅では、スクワットや左右のもも上げ、つま先立ちを1日30回程度する。片足で左右1分ずつ立つのもよいという。できる範囲で取り組みたい。 食事で気をつけること 食事では、魚や大豆製品、卵などでたんぱく質を十分に摂取。みそ汁にネギやショウガなどの薬味を使えば、より体が温まる。「温活をすると代謝や免疫力が上がり、冷え以外の体の不調も良くなる」 就寝時に冷えを感じる場合は 特に就寝時は冷えを感じやすい。一般社団法人・日本温活協会(東京)が認定する「温活指導士」で鍼灸(しんきゅう)師の川崎真澄さんが勧めるのは湯たんぽの活用だ。ほどよい温かさで、緩やかに温度が下がっていくため、布団の中に入れておけば眠りにつきやすくなるという。暖房器具と違って空気も乾燥しない。「適切に使えば、血流が良くなり、体がぽかぽかしたまま眠りにつけます」と川崎さん。 容器に入れるお湯は、70度前後。抱いてほのかに温かく感じる程度にする。全身に冷えを感じる人はおなかの近くに置くと、内臓から温まり、全身の血流が良くなる。腰や首の後ろに置いても体温が上昇する。 湯たんぽ利用で気をつけること ただし、低温やけどには注意したい。タオルを巻いて肌に直接触れないようにするほか、長時間ずっと同じ場所に当て続けない。十分温まったら、入眠する前に体に触れないよう、端に寄せる。川崎さんは「高齢になると、熱さに鈍感になりがち。製品の説明書に従って利用してほしい」と呼びかける。 ■暮らしの中で「温活」を心がけよう
咳が止まらなかったり、息苦しいと感じた際に、調べてみると「呼吸器疾患」という言葉を目にすると思います。 呼吸器疾患の症状はさまざまあり、主に喉や肺に原因がある病気です。この記事では呼吸器疾患の症状や原因、改善方法などを解説します。 この記事を読むことで早急に症状を和らげられる可能性もあるので、ぜひ最後までご覧ください。 呼吸器疾患とは? 呼吸器疾患の特徴として、腫瘍、感染症、アレルギー、自己免疫性疾患などの疾患の種類が多いということです。 また、呼吸器疾患は「気管支喘息」「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」「肺がん」の呼吸器感染症が呼吸器疾患の4大疾患と言われています。 呼吸器疾患の症状 上記でも記載したとおり、呼吸器疾患は複数の症状を指しています。 呼吸器疾患(呼吸器の病気)にかかることで、身体に様々な症状が出現します。 咳が止まらない 健康な身体でも1日に何回かは咳は出ます。しかし、何度も続く咳や、痰の絡みが激しい咳がある場合、呼吸器疾患の疑いがあると判断できます。 痰が異様に絡む 咳と同様に、健康な身体であっても痰はでますが、いつもよりも痰の量が増えたり、色(黄色や茶色)が付いたり、血液が混じる(血痰)などは異常のサインです。 息切れ(呼吸困難)がある 普段の生活を送っていて「呼吸が苦しい」などの症状がある場合、呼吸器疾患の疑いがあります。 通常、息切れ(呼吸困難)は、酸素が不足しているときなど、酸素消費量が多い運動後に出ることが多いですが、呼吸器疾患の進行によっては、運動をしていなくても息切れが起こるなど自覚するようになります。 喘鳴(ぜいめい)|変な呼吸音が鳴る 喘鳴とは、呼吸に伴って連続的に発生する異常な呼吸音のことです。診察に行かれる患者さんは自身の症状を説明するときに、「ゼーゼー」「ヒューヒュー」と表現することが多いです。 気管支喘息の発作や、異物の誤飲などがある際、気管や気管支が狭くなり、そこを無理やり通過する酸素が笛のようになって、喘鳴を出します。 胸の痛みを感じる 胸痛は、多くの疾患で出現するので、胸の痛みを訴えるだけでは疾患名(病気・症状の名前)を特定できないケースがほとんどです。 ただし、胸痛がある疾患には、狭心症・心筋梗塞などの緊急を要する病気があります。 胸痛を訴える患者さんを担当した医師は、急な発症かどうか、以前にも同じような胸痛を経験したか、他の既往症(持病)があるかなど、早急に問診します。仮に心臓の疾患であれば、循環器科もしくは呼吸器科が担当します。 嗄声(させい)|声が枯れている 声が枯れている(しゃがれ声)ということは、声帯に異常がある可能性が高いです。 こういった症状では、耳鼻咽喉科の医師が診療を担当します。 一方、声帯は大丈夫でも、それを担当する「反回神経」がマヒを起こしても声が枯れることもあります。 反回神経麻痺(=嗄声)の患者さんは声帯が正常に閉じないので、液体や麺類を食べるときむせやすくなるなどの症状が挙げられます。 ここからは上記で挙げた呼吸器疾患症状別の原因などを解説していきます。 咳喘息の原因 咳喘息は、慢性的に咳が続く気管支の病気です。風邪などに併発して起こることが多く、風邪を引いた後に2~3週間以上咳が続くことがあれば、この病気の可能性が高いです。 1日中激しめの咳が出る・タバコの煙・寒暖差・会話をする際に咳が出やすいのも特徴です。また、咳の発作が激しいと、胸に痛みが出てきます。 成人の中では、女性に多い傾向があり、咳喘息の再発を繰り返します。 こういった症状は、気管支喘息とは違い、呼吸困難や喘鳴はありません。さらに発熱や痰などの症状もないケースがほとんどです。 咳喘息の原因として、さまざまな刺激に対して気管支が過敏になり、気管の炎症・咳の発作が起こります。 原因として、たばこの煙(受動喫煙を含む)・室内外の温度差や天気(雨天等)・ストレスなど、さらにホコリやダニなどのハウスダストなども咳の発作の要因になると言われています。 慢性塞性肺疾患(COPD)になる原因 慢性閉塞性肺疾患(COPD) は 咳・たん・息切れが主な症状です。 頑固な咳やたんが続き気管支が狭くなる「慢性気管支炎」と肺の組織が破壊されて徐々に進行する息切れや呼吸困難を起こす「慢性肺気腫」のどちらか、もしくは両方の症状により、肺に送る空気(酸素)の流れが悪くなる病気です。 初期症状では自覚症状がほとんどないケースが多く、徐々に進行して気付けば重症となります。 慢性塞性肺疾患(COPD)は進行してから、患者さんが咳やたん・息切れなどの症状に気づく場合が多いです。 この症状を「年齢のせい」と思う方も多いので、必ず見逃さないように注意しましょう。 日本では40歳以上の8.5%(男性13.1%,女性4.4%)、COPDの潜在患者は530万人以上と推測されていて、治療を受けているのはそのうち5%未満と言われています。未治療の患者さんが多いのも特徴です。 また、慢性塞性肺疾患(COPD)は「別名タバコ病」とも言われています。この病気の最大の原因は喫煙で、患者さんの90%以上は喫煙者です。副流煙も含む喫煙が大きく影響し、タバコを吸わない人でも4.7%の人がCOPDにかかっています。 気管支喘息になる原因 喘息は、呼吸するときに空気の通り道である気道(気管支など)に炎症が起きて、空気の流れが制限される病気です。 気道はいろいろな吸入刺激に反応して、発作的な咳が出たり・気管支が鳴る・たまに呼吸困難が起きます。 この症状は、治療により改善したり、自然と治ったりしますが、治療の継続を怠れば繰り返し症状が出てきます。 ※年に数回軽い喘息発作を起こすだけで、たとえ無症状でも気道では長い期間炎症が継続しています。 適正な治療を行わないと、炎症とその修復が繰り返される過程で気道の壁が厚くなり、空気の流れが元に戻らず、気道の過敏性も増します。 また、家の中など、室内のアレルギー物質として最も多いのがハウスダストやダニです。 ほかにも、花粉やカビ・薬物・排気ガスなどの大気汚染物質・呼吸器感染症(かぜやインフルエンザなど)・タバコ(副流煙)・ストレスなどが知られ、その原因は多くあります。 […]
のどの痛みや違和感が長く続いている。原因の分からない頭痛やめまい、体のだるさがつらい。こうした不調の要因として「慢性上咽頭炎(まんせいじょういんとうえん)」があることが分かってきました。慢性上咽頭炎の患者さんを多く診ている、堀田修クリニック院長の堀田修先生に、そのメカニズムや予防法などについて伺いました。 急性ののど風邪が慢性上咽頭炎のきっかけに 風邪をひいたときに、のどの奥に痛みを感じたことはありませんか? 実はその原因は、「のどの奥」ではなく「鼻の奥」に位置する上咽頭にあるようです。 上咽頭は、左右の鼻の穴から吸い込んだ空気の流れを下方へ変え、中咽頭を通じてその下の気管へ送る“空気の通り道”です。上咽頭の表面は繊毛上皮(せんもうじょうひ)で覆われ、空気と共に入ってくる細菌やウイルスなどの病原体を付着する役割があるほか、侵入してきた病原体から体を守る免疫機能として働くリンパ球が多数存在します。風邪のウイルスに感染すると、体を守るために上咽頭のリンパ球が活性化し、炎症物質が産生されます。こうして上咽頭に炎症が起きると、いわゆる急性の“のど風邪”と呼ばれる状態になります。 医学的には「急性上咽頭炎」といい、前述ののどの奥の痛みのほか、のどがヒリヒリする、飲み込むときにのどが痛い、声がかれて発声しにくい、といった症状が現われます。ウイルス性ののど風邪の場合は、体の免疫機能が働き、ウイルスを攻撃して死滅させることで改善する場合がほとんどですが、ウイルスがなくなった後も上咽頭に炎症やうっ血が残ることがあります。この状態を「慢性上咽頭炎」といいます。 慢性上咽頭炎をセルフチェックするには 慢性上咽頭炎は日本独自の概念で、現在も研究やその概念の普及が進められている段階です。下記のような代表的な症状が挙げられますが、「耳鼻科を何軒も受診したけれど、“異常はない”と診断された」といった声もこれまであったそうです。 まずは、慢性上咽頭炎の可能性をチェックしてみましょう。 風邪は治ったはずなのに、咳(せき)がいつまでも続く のど飴をなめても、のどの痛みが改善しない 鼻水がのどを流れて落ちてくる のどの奥が詰まった感じが続いている 朝起きると、痰(たん)が絡む のどが常にイガイガしている 一般的な風邪の症状とよく似ていますが、慢性上咽頭炎を起こしている上咽頭の粘膜はうっ血しているという特徴があります。そこで医療機関で調べる際には、内視鏡で上咽頭の粘膜を観察したうえで、塩化亜鉛溶液という薬剤を染み込ませた綿棒で粘膜をこする方法が行われています。粘膜がうっ血していると、こすることによって綿棒に血液がにじんでくるため、慢性上咽頭炎だと診断することができます。 また、自分自身で、耳の下の筋肉(胸鎖乳突筋:きょうさにゅうとつきん)を3本指で押すことで調べるのも一つの方法です。押してみて痛みがあるようなら上咽頭に炎症が起きている可能性が高いので、「慢性上咽頭炎ではないでしょうか」と医師に相談してみるとよいでしょう。 慢性上咽頭炎が全身の不調と関係する3つの理由 慢性上咽頭炎は風邪と見分けがつきにくい症状が現われるだけでなく、頭痛や首・肩こり、めまい、全身の倦怠感、うつ、過敏性腸症候群、腎炎や関節炎、皮膚炎など、さまざまな疾患や不調に関係している可能性があると考えられています。 全身の不調と関係する理由として次の3つが挙げられます。 1 上咽頭炎の炎症の放散によって関連痛が起こる 実際に炎症が起きている上咽頭とは異なる部位に痛みが生じることを関連痛といいます。慢性上咽頭炎では、上咽頭に比較的近い部位である頭や首、肩に痛みが生じ、頭痛や首・肩こりの原因となる場合があります。 2 自律神経が乱れやすくなり、さまざまな不調の要因になる 上咽頭には神経線維が多く存在し、脳の迷走神経の末端が分布しています。上咽頭に慢性的な炎症が起こると、迷走神経が刺激され、自律神経系に影響を及ぼすと考えられています。自律神経のバランスが崩れることで、めまいや全身の倦怠感、過敏性腸症候群、うつなど、さまざまな症状を招く可能性があります。 3 上咽頭炎が「病巣」となって二次疾患を引き起こす 風邪のウイルス感染などによってリンパ球などの免疫をつかさどる細胞が活性化し、炎症物質が産生されると、その炎症物質が血流に乗って全身を駆け巡り、腎臓や関節、皮膚などに炎症を引き起こす場合があります。この場合、上咽頭炎を「病巣炎症(びょうそうえんしょう)」、それによって生じた腎炎、関節炎、皮膚炎などを「二次疾患」と呼びます。 免疫力の低下や刺激物質、冷えなどに要注意 慢性上咽頭炎は、急性ののど風邪(急性上咽頭炎)をきっかけに発症し、悪化するケースが多くみられます。風邪をひかないように普段から予防することが大切なのはもちろん、風邪をひいてしまったら睡眠不足やストレス、疲労の蓄積などは極力避けましょう。免疫力が低下していると風邪が治りにくくなり、上咽頭炎が慢性化しやすくなるためです。 さらに次のようなことにも気をつけましょう。 ●タバコの煙や粉塵、黄砂など刺激性の高い物質が含まれた空気を、できるだけ吸い込まないようにする 刺激性の高い物質はリンパ球を活性化させ、炎症を起こす要因となります。 ●特に首の後ろを冷やさないようにする 首が冷えることも慢性上咽頭炎を悪化させる要因の一つです。首の後ろを温めると上咽頭の血流がよくなり、うっ血状態の改善が期待できます。冷房のきいた室内で過ごす夏場も冷やさないよう心がけましょう。 1日2回の鼻うがいが予防・改善に効果的 自分でできる慢性上咽頭炎の予防や改善方法としておすすめしたいのが「鼻うがい」です。 上咽頭だけでなく、鼻腔(びくう)全体を洗浄することで、炎症の原因になる粉塵やアレルゲンなどを洗い流す効果があります。鼻うがい用の洗浄液や、水に溶かして使う粉末などの市販品を利用するとよいでしょう。1回につき200cc程度の量を目安にすると、十分に洗浄することができます。 起床時やお風呂上りなど、1日2回を目安に行いましょう。 鼻うがいには次の2つの方法があります。
寒さが増し、体調を崩しやすい時期になりました。暖房器具をしっかり使い、適切な服を選ぶことが生活する上で大切です。認知症で苦手なことがあっても、自分で工夫したり、周囲が気にかけたりすることで、この冬を快適に過ごせるよう、ポイントを確認します。(小池勇喜、阿部明霞) リモコン操作 図入りで説明…エアコン 「暖かい風が出るのは、どのボタンだい?」 11月下旬、茨城県北茨城市の菊池みねさん(82)は、ケアプラン作成を担当する株式会社「夢なかま」のケアマネジャー、加藤佳代さん(54)の訪問の際にエアコンのリモコン操作の方法を尋ねた。 「暖房は、このオレンジのボタンを押してくださいね」と、加藤さんはボタンの色の違いでわかりやすく説明。温度設定のやり方なども一緒に確認した。 高齢になると、機械の使用が苦手になるケースがある。特に、エアコンや暖房器具のような一年中使い続けることのない家電は、間が空くことで操作を忘れたり、使うことを思いつかなくなったりしがちだ。リモコンなどの小さな字が見にくくなるという問題もある。 使い方や適切な設定温度を改めて確認して、冬場に暖房器具を活用できないような事態は避けたい。 「リモコンのどのボタンを押せばいいのか、家族やヘルパーさんに図入りで書いてもらっておき、操作する時に確認する方法もある」と加藤さんは話す。 菊池さんは、大切な物をしまった場所を忘れてしまうことが時々あるという。リモコンがなくならないように、居間の机の上など、いつも置く場所を決めておくのもよいだろう。 冬物 取りやすく整理…服装 日々の服装を適切に選ぶことも大切だ。 神奈川県鎌倉市内で一人暮らしをする認知症の女性(87)は、家の中でじっとしているより活動する方が好きだという。デイサービスに週3日通い、他の日も友達に会ったり、買い物をしたりと外出の機会は多い。 でも、「日中の暖かさにつられて、コートなど防寒具を忘れて出かけてしまうことがある」という。朝晩、かなり冷え込む日もあるため、かかりつけ医には「肺炎などになる恐れがあるから、外出時の服装に気をつけて」と言われている。 女性は「一人で生活しているから、自分で気をつける。寒ければ、襟巻きとか着る物で調節して出かけようと思う」と意識している。 ただ、認知症の症状で、暑さ、寒さを感じにくくなる場合もある。近くに住む女性の娘(49)が訪ねると、肌寒く感じるような気温でも窓が開いていたり、薄手の服を着続けていたりと、「寒くないのかな」と心配になる場面もあるという。 そこで、女性の娘は、季節に合わなくなった衣服を押し入れの上の方に片付けた。冬用の衣服は女性が使いやすいようにと、「セーター」「カーディガン」などとラベルを付けたベッド下の収納に整理して入れた。 「母が自分で気づけないことや用意できない物は、時期を見て家族が調えて、安全に過ごせるようにしている」という。 服装不安ならサポート受けよう…専門家の助言 冬を過ごす際のポイントを「認知症の人と家族の会」副代表理事で、川崎 幸さいわい クリニック(川崎市)の杉山孝博院長(75)=写真=に聞いた。 ◇ 寒い季節は外に出るのがおっくうになって、家の中にこもりがちです。体を動かし、人との交流を持つためにも、無理のない範囲で外出を続けるのがよいと思います。その際には、マフラー、手袋などの防寒対策をしっかりしてください。 うまく服装を調節できるか自信がない人は、家族やヘルパーに何を着るか一緒に選んでもらうなどサポートを求めましょう。 認知症では、できないこと、気づけないことも出てきます。家族など周囲の人が、季節に合った衣服や寝具にそっと交換するといった配慮も必要です。 ただ、どんなに暖かい服を用意しても、真冬に薄着でいる人もいます。そんな時、家族が厳しく注意してばかりいると、本人も嫌な思いをします。もちろん、程度にもよりますが、体調を崩さない範囲なら、好きにしてもらった方が混乱しないで穏やかに過ごせる場合もあります。柔軟な対応が必要だと思います。 これは高齢者全体への注意点になりますが、急な寒暖差で血圧が上下し、体調不良につながる「ヒートショック」が心配です。暖房の利いた部屋から10度以上温度が低い浴室、脱衣所、トイレなど寒い場所へ行く際は要注意です。お風呂の場合、お湯の温度をあまり高くしないことや、入浴前に浴室や脱衣所を暖めておくことが対策になります。 年末年始でふだん利用している訪問介護やデイサービスが休みになったり、久しぶりに家族と一緒に過ごしたりすることもあると思います。認知症の人は、生活のリズムが変わることによって、混乱してしまうこともあります。 大切なのは、本人が「ここにいても大丈夫」と思えること。安心してもらえる環境を整えるために、どこにいるのか、誰といるのかといったことを優しく丁寧に伝えてください。 「冬は、お風呂で倒れてしまう人が多いから、入る前に浴室を暖めましょう」 茨城県かすみがうら市の女性(90)宅で、居宅介護支援センター「センチュリー石岡」のケアマネジャー、村山知彦さん(43)が、浴室に付いている暖房機能のボタンを押してみせた。 暖房による温度の調整は浴室や脱衣所でも大切だ。温かい湯船とその周辺の大きな温度差で体調不良が起きる「ヒートショック」の心配があるからだ。 女性は認知症や筋力低下で要介護2。週4日利用しているデイサービスで入浴する場合は職員が見守ってくれるが、「お風呂に入るとぐっすり眠れるから」と一人暮らしの自宅でも入浴することがあるという。 村山さんは一緒にボタンの位置を確認し、「入る前に『暖房』を押す」と繰り返した。念のため、ボタンの近くの壁に、「お風呂をくむ前に『暖房』を押して下さい」と貼り紙もした。 浴室に暖房機能が付いていない場合は、シャワーでお湯を出し続けるなどして湯気で暖める方法もある。脱衣所向けの暖房器具も市販されている。 村山さんは「自宅でお風呂に入る人は、浴室や脱衣所を暖めてしっかりヒートショック対策をしてほしい。一人暮らしなどでは、気分が悪くなった時に気付いてくれる人がいないケースも考えられるので、デイサービスを利用しているなら、そこで入浴するのが安心だと思う」と話す。 こまめな水分補給 乾燥する冬も大切 「こまめな水分補給」は夏の熱中症対策でよく耳にしますが、乾燥しやすい冬も必要だそうです。気づかないうちに体の水分が不足する「隠れ脱水」を防ぐためです。今回取材した女性は、目に付きやすい枕元にペットボトルを置き、「寝る前に一口、トイレに起きたら一口」と心がけているそうです。 「重ね着」にも注意が必要だと聞きました。厳しい寒さでついつい着込み、下着からコートまで10枚以上というケースもあるそうですが、「体が動かしにくくなって、転倒のリスクが高まる」(「夢なかま」の加藤さん)とのこと。やはり、適切な暖房の使用が大切だと感じました。(小池)
ケーキや生鮮食品などを買ったときにもらう保冷剤。お家で余らせていませんか? 暑い時期なら使う機会もあるけれど、冬は冷凍庫にしまったままという人も多いのでは。 実は、保冷剤はカイロ代わりにもなります。今回は冬に便利な保冷剤の活用法を紹介しましょう。 保冷剤をカイロに変身させる方法 冷たさをキープするための保冷剤が、実はじんわり温かいカイロとしても使えるそうです。カイロとして使うための手順を紹介します。 カイロとして使える保冷剤の種類 表面がツルツルしたビニール素材の保冷剤を使います。表面が不織布のものは今回使いません。冷凍庫から出して常温に戻したものを用意してください。 (写真左が不織布のもの、写真右がビニール素材のもの) 作り方 お風呂程度の温度のお湯を用意して、保冷剤がつかる大きさの容器に注ぎます。そこに保冷剤を入れて温かくなるまで放置します。 表面についた水分を拭いたら準備OK。タオルやハンカチを巻いて、身体の温めたい部分にあてて使います。くれぐれも低温やけどに注意してくださいね。 注意 保冷剤を電子レンジにかけないでください。中身が破裂することがあり、危険です。 保冷剤を温めるときに熱湯を使わないでください。袋の耐熱温度を超えて破損する恐れがあります。
三十歳以上の女性が、三人に一人の割合で発症する子宮筋腫。子宮の筋肉にできる良性の腫瘍で、大きくなると月経量が増えたり、不妊になったりといった症状を引き起こす。症状が重い場合は筋腫や子宮の摘出手術が必要となるが、近年は腹部に小さな穴を開ける腹腔(ふくくう)鏡手術が主流。開腹手術に比べて患者の負担は少ない。 (河野紀子) 「重い生理が劇的に良くなった」。二〇一七年夏、腹腔鏡手術で筋腫を取り出した大阪市の会社員女性(37)は言う。 二十八歳の時の子宮頸(けい)がん検診で、数センチ程度の筋腫が二つあることが判明。当時は自覚症状はほとんどなく、医師からは年一回の経過観察を続けるよう言われた。しかし、やがて筋腫二つはつながって、こぶし大に。生理時にはレバー状の血の塊が出た。量も増え、一番大きいナプキンを使っても一時間半持たないほど。筋腫が膀胱(ぼうこう)を圧迫して頻尿にも苦しんだ。 手術は四時間程度で済んだ。「腹部に穴を開けるだけなので回復が早かった」と振り返る。 ◆不妊や流産 危険も 筋腫ができるのは、子宮の外側表面を覆う漿膜(しょうまく)、筋層、子宮の内側を覆う粘膜=図。大きさは、米粒程度から二十センチ超までさまざま。数も数個の人もいれば、数え切れないほどある人もいて個人差が大きい。原因は不明で、月経に関与する女性ホルモンが影響することが分かっている。閉経して女性ホルモンが減ると、小さくなる。悪性化することはない。 昔に比べて出産回数が減って月経回数が増えた分、子宮筋腫のある女性は増えている。「子宮頸(けい)がん検診や妊娠時の内診で見つかるケースが多い」。愛知医科大(愛知県長久手市)産婦人科学講座主任教授の若槻明彦さん(63)は言う。症状は軽い場合が多く、数カ月ごとに受診して様子を見る例がほとんどだ。 ただ、筋腫のある場所や大きさによっては、受精卵の着床を妨げるなどして不妊や流産のリスクが高まるため、妊娠を望むなら早めの治療が大切だ。妊娠を希望しなくても「貧血を起こすほど月経が重いなど、筋腫の大きさが五、六センチ以上で症状があるなら治療を検討してほしい」と話す。 ◆小さな穴から摘出 治療は、女性ホルモンの分泌を抑えて筋腫を小さくする点鼻薬や内服薬もあるが、長期間使うと骨粗しょう症を招く恐れがあるため手術が基本。筋腫だけを取る「筋腫核出術」と、子宮ごと取る「子宮全摘術」がある。ただ、筋腫だけの場合は15〜30%の割合で再発するとされ、妊娠を希望しないなら全摘出を検討する。子宮を取ることで更年期障害の症状が出るのではないかと心配する人もいるが、残った卵巣が女性ホルモンを分泌するためリスクは上がらない。 近年主流になっている子宮筋腫の腹腔鏡手術は、腹部に数カ所穴を開け、鉗子(かんし)などを入れて摘出する方法。愛知医科大病院は県内最多の年間約二百件を実施する。腹部を大きく切開せずに済むため、入院は約六日間、術後二週間ほど療養すれば仕事にも復帰できるといい、日数は開腹手術の半分ほどで済む。 若槻さんは「筋腫が大きすぎるなどわずかな例を除き、腹腔鏡手術が可能」と説明する。公的医療保険が適用され、費用は三割負担なら約二十五万円。年齢や所得に応じて自己負担に上限を設ける高額療養費制度を使えば、平均的な世帯の場合、約九万円という。
梅雨が明け、暑い日が続くようになりました。酷暑は困りますが、夏に日差しがないと寂しい気がします。 さて、日本抗加齢医学会の年次総会が6月14日から16日まで横浜市で開催され、アンチエイジング医学の最先端を行く様々な研究成果が発表されました。神奈川県の黒岩祐治知事がメッセージを寄せ、横浜市の林文子市長が講演を行ったほか、3日間で延べ6000人を超える抗加齢医学の研究者、医療関係者が会場に足を運び、最新の知見に耳を傾けました。 取り上げられたテーマは、細胞の中で起こる生命現象、皮膚老化の治療、サプリメントから、ロボットに関する技術を研究する「ロボティクス」、人工知能(AI)に至るまで、多岐にわたりました。今回は、その中からいくつかの話題を取り上げたいと思います。 体重も遺伝子で決まるの? ヒトの全ゲノムは2003年に解読されました。当時は1人のDNAを解読するのに約100億円の費用がかかりましたが、今では10万円を切るほど解析コストは安くなり、解析に要する時間も1日程度と、スピードも格段に速くなりました。 個人ごとの遺伝子のわずかな違い(遺伝子多型)を解析すると、様々な病気のリスクがわかります。それだけではありません。体形や顔、声、性格などもわかるようになりました。身長は、成人になってからはあまり変わりませんが、体重は変動していきます。 国立研究開発法人「理化学研究所」(本部・埼玉県和光市)の鎌谷洋一郎客員主管研究員は、10万人以上の日本人のゲノムデータを用いて体重調節に関係する遺伝子を解析しました。すると、免疫細胞が体重と関係していたことがわかり、結果を今回の総会で報告しました。16年には海外の研究者が、免疫細胞であるマクロファージやナチュラル・キラーT細胞(NKT細胞)が体重調節に関与していることを報告しており、日本人を対象とした今回の研究でも、それが裏付けられたことになります。 体重は、やみくもに「減らせばいい」のではありません。おそらく私たちには遺伝的に適切な体重があるのでしょう。その範囲であれば、「健康」で、若々しい「アンチエイジング」の状態を保つことができるのではないかと考えられます。 ただし、動物においてはカロリー摂取を減らし、体重を減らすと、確かに長生きはするのですが、生殖活動は低下します。健康長寿と種の保存は、必ずしも両立しないのかもしれません。 ビタミンDが果たす重要な役割 ビタミンDは骨の健康に重要な役割を果たし、骨粗しょう症の治療にも使われている……ということは、皆さんご存じですね。ビタミンDは、サケ、マグロ、サンマといった魚から摂取することもできますが、日光を浴び、体内のコレステロールが変化することによっても生成されます。 屋内で窓越しに日光に当たっても、ビタミンDはできません。曇りの日や日陰にいる時も同じです。皮膚の色がもともと黒い人は、生成量は低い傾向にあります。肥満の人は、体脂肪がビタミンDに結合し、ビタミンDが血中に入るのが阻害されます。 ビタミンDの不足は、骨の健康に悪いだけでなく、高血圧や、花粉症などのアレルギー、結核、歯周病、多発性硬化症、冬季うつ病、末梢動脈疾患、1型糖尿病を含む自己免疫疾患、パーキンソン病などの疾病のリスクを高めることが知られています。男性では、勃起不全との関連性が指摘されていますので、日光をしっかり浴びた「日焼け」が男らしさのシンボルと言われるのには一理あります。 また、ビタミンDは、結腸直腸がん、前立腺がん、乳がん、腎臓がんを予防する可能性があることが示唆されています。 この一方で、日焼けは皮膚の加齢を促進します。太陽がまぶしい季節に屋外に出る時には、紫外線から皮膚を守るサンスクリーン剤(日焼け止め)を使うことが、特に女性においては、当たり前になっています。しかし、ビタミンDは一日1000IU(国際単位)程度の摂取が必要と言われ、世界的にみても、「不足しがち」な栄養素です。 さて、今回の学会では、東京慈恵医科大学の浦島充佳教授が、ビタミンDサプリメントとプラセボ(偽薬)を用いた比較試験を行い、結果が報告されました。肺がんや消化器のがんにかかった患者で、血中のビタミンDの濃度が低い場合、ビタミンDサプリメントの摂取によって生存期間が延びることがわかりました。肺がんや、胃がん、大腸がんの治療を受けている方は、ビタミンDの血中濃度を測定してもらうとよいでしょう。 以上、今回は日本抗加齢医学会の総会から最新の話題をお届けしました。
長引く新型コロナウイルスの影響で、体力が低下したり運動不足を感じたりしている人は少なくないでしょう。健康のためにスポーツやトレーニングをしている一方で、続けているうちに体が思うように動かなくなる、疲れやすくなるといった症状を感じる場合があります。このように慢性的な疲労が蓄積した状態をオーバートレーニング症候群といいます。長﨑内科クリニックの長﨑文彦先生に、オーバートレーニング症候群にならないための予防法や対処法について伺いました。 運動後、なかなか疲労が取れないのはなぜ スポーツやトレーニングは、日常生活の活動よりも大きな負荷がかかります。その分、効果は上がりますが、スポーツの後やトレーニング後に疲労が残ったまましっかりと栄養や休養を取らないでいると、その分疲労が残ったままだったり、体力の低下がみられるようになります。オーバートレーニング症候群は、トレーニングなどによって生じる生理的な疲労が十分に回復しないまま積み重なって起こる、慢性疲労状態のことをいいます。 オーバートレーニング症候群の原因は、単に筋肉が疲労しているということばかりでなく、肉体的あるいは精神的なストレスにより、脳の視床下部や脳下垂体から分泌されるホルモン(コルチゾール、カテコールアミン、テストステロンなど)のバランスが崩れることも同時に起こっていると考えられています。 ホルモンには、下記のような働きがあります。 コルチゾール 副腎皮質から分泌されるホルモンの一つで、主な働きは肝臓での糖の新生、筋肉でのたんぱく質代謝、脂肪組織での脂肪分解などの代謝促進、抗炎症および免疫抑制などです。 カテコールアミン アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミンの三つを指します。カテコールアミンが過剰に分泌されると、重度の高血圧や過度の発汗、動悸、頭痛などが起こるほか、興奮状態になり、パニックに襲われたような感覚に陥りやすくなります。逆にカテコールアミンが不足すると、心身の脱力感や意欲の低下が起こり、抑うつ状態を招きやすくなります。 テストステロン 男性ホルモンの代表であり、生殖機能に大きな役割を果たすとともに、筋肉や骨の形成を促し、日常生活においてバイタリティーやモチベーション、心身の健康維持にも重要な役割を担う性ホルモンです。 見逃さないで、オーバートレーニング症候群のサイン 一気に激しい運動を行うことで疲労が生じるのはオーバーワークの状態で、これはオーバートレーニング症候群ではありません。 オーバートレーニング症候群の場合、初期症状は軽くて気がつきにくいものですが、症状が進行していくと、スポーツ競技成績の低下や、疲れやすくなったりするのをはじめ、全身の倦怠感や睡眠障害、食欲不振、体重の減少、集中力の欠如、安静時の心拍数や血圧の上昇、運動後に安静時の心拍数や血圧に戻る時間が遅くなるなどの症状が表われてきます。 下記のような状態も発見の目安になります 最近、高強度のトレーニングが増えた ジョギング程度の運動がつらい 安静にしていても疲労感がある よく立ちくらみをする 毎日走らないと不安だ 練習しているのに記録が落ちる 起床直後の心拍数が1分間に70回以上ある 風邪をひきやすくなった 気分が落ち込む 眠れない 真面目な性格、計画通りやらないと気が済まない 出典:長﨑先生の取材を基に作成 程度の目安としては、日常生活において症状はなく、ジョギング程度であれば問題ないもののスピードが上がるとついていけなくなった場合は軽度、ジョギング程度の軽いトレーニングでもややつらくなり、日常生活において疲労感や立ちくらみといった症状がある場合は中程度、ジョギング程度でもつらくほとんどトレーニングはできない状態で、日常生活において疲労症状が強く眠れないといった症状がみられたら重度といえます。 オーバートレーニング症候群かも?と感じたら 貧血や感染症などではないにもかかわらず、体のだるさや食欲低下、寝つきが悪いといった症状が表われたら、心拍数や血圧をチェックしてみましょう。 疲労症状が強まるにつれて特に起床時の心拍数が増大するといわれているため、起床時に心拍数をチェックすると疲労状態を把握しやすくなります。起床時の心拍数が1分間に10回以上増加している場合は、オーバートレーニング症候群と考えられます。 起床時の心拍数のほか、安静時の血圧は上昇しているか、運動後、安静時の心拍数や血圧への回復が正常かといった状態を見ることも役立ちます。日頃からセルフチェックすることで、オーバートレーニング症候群の早期発見につなげましょう。 また、気分プロフィール検査(POMS)※1や心理的競技能力診断検査(DIPCA.3)※2のような心理テストもチェック方法として用いられます。さらに心肺運動負荷試験(CPX)※3は、有酸素運動系から無酸素運動系まで運動能力とエネルギー利用状況などを的確に判断することができることから診断に有用と考えられます。少しでも症状が気になる人は、早めにスポーツドクターのいる医療機関を受診しましょう。 ※1:65の質問から、7つの気分の状態(怒り、混乱、抑うつ、疲労、緊張、活気、友好)を測る検査。 ※2:5つの因子と12の尺度からスポーツ選手の試合場面に必要な精神力を把握することができる検査。 ※3:運動中の呼気ガスを分析して、心肺機能や持久力を評価する検査。 オーバートレーニング症候群の対処法としては、 1)1~2カ月間は基礎的トレーニング(ジョグ、ウオーキング)のみとし、ハード系トレーニングを中止 2)完全休養はしない 3)1~2カ月後、体調をみながらトレーニング強度を戻していく 4)基礎的トレーニングは継続する 上記が原則です。 栄養面においてもバランスのいい食事を取り、特にビタミンB群やビタミンCを摂取すると良いとされています。また、ストレスをためないことも忘れてはいけません。毎日トレーニングをしないと不安な人やパフォーマンスの低下の原因をトレーニング不足だと考えこむ人は注意しましょう。 オーバートレーニング症候群は、普段から自分の体調をチェックする習慣をつけることで、体調の変化に気づき症状の判断につながりやすくなります。適切な運動量と休養に努めることでオーバートレーニング症候群を予防しましょう。
9月にキンマー地区にオープンしたばかりの「T-Matsuoka Medical Center」は、日本全国に施設を展開している医療法人「Emergency Medical Service」が出資・運営する病院だ。「日本本土よりも、質の高い日本式医療を受けていただく」ことを目標に、日々研さんを積んでいるスタッフは、日本人医師と日本人スタッフ、そして日本で研修を受けたベトナム人を中心に構成されている。 同院では日本でも導入が始まったばかりの最新型のMRI・CTなどの医療機器が導入されており、信頼性、安全性は極めて高いとのこと。日本とは全く異なる環境下で暮らしていると、体の不調を今まで以上に感じる人も多いだろう。 気になることがあれば早めに診察を受けておこう。結果を受けて気になることがあれば、日本の主要な病院の専門家や医師にセカンドオピニオンを求めたり、必要に応じて、日本の医療機関を紹介してもらったりすることも可能だ。ハノイにこういった医療機関があるということを知っているだけで、日々の不安が多少和らぐのではないだろうか。 ※上記内容は2022年9月30日時点の情報です。詳細は店舗までお問い合わせください。 ※COVID-19感染拡大予防措置における政府からの新たな通達に伴い、各店舗の営業状況が変更される場合がございます。予めご了承ください。
歯みがきは毎日欠かさず行いたい日常習慣のひとつ。でも舌みがきを日課にしている人は意外と少ないのでは? 実は舌が汚れていると、歯みがきをしていても歯の表面に細菌が付いてしまうリスクがあるとされています。さらに口臭の発生源となったり、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)を引き起こすきっかけになったりすることも。舌の汚れ「舌苔(ぜったい)」の問題点と、予防や改善のための舌みがきのポイントについて、鶴見大学歯学部探索歯学講座教授の花田信弘先生に伺いました。 舌が汚れていると歯みがきの効果が半減!? 舌を鏡で見ると、表面が白くなっていませんか?この舌表面に付いた白い苔のようなものを「舌苔(ぜったい)」といいます。 うっすらと白くなっている程度で、舌本来の色が透けて見えるようならあまり問題はありませんが、白い部分に厚みがあったり、黄みがかっていたりする場合などは舌苔が蓄積している可能性があります。 そもそも舌苔とは舌の汚れのことです。舌の表面には数多くの「舌乳頭(ぜつにゅうとう)」というごく小さな突起があります。この突起の凸凹に、口の中の細菌や食べかす、はがれ落ちた粘膜の上皮、唾液の成分などがたまり、細菌がどんどん増殖していきます。 すると、「バイオフィルム」と呼ばれる菌膜が舌表面に形成され、舌苔ができるのです。歯垢(しこう)は、このバイオフィルムのひとつで、虫歯や歯周病を予防するためには、歯みがきによって歯の表面に形成されたバイオフィルムを除去することが欠かせません。 歯みがきの重要性は広く認識されているので、毎食後、丁寧にみがくことが習慣になっている人も多いことでしょう。しかし、舌苔が付いたままの状態では、せっかく歯をみがいても、歯みがきの最中に舌の細菌が歯の表面に付いてしまうリスクがあります。 歯みがきだけではなく、舌みがきも習慣化することが口の中の健康維持のためにはとても大切です。 ■バイオフィルムの形成過程 舌の汚れは口臭や誤嚥性肺炎の原因にも! 舌苔を放置していると虫歯や歯周病に加え、「口臭」のリスクも高まります。口臭の原因菌のほとんどが舌苔に存在しているためです。 口内の粘膜の上皮細胞は新陳代謝によって絶えず生まれ変わっています。死んだ上皮細胞ははがれ落ちて舌表面に集まります。するとその死んだ細胞をエサとする口臭の原因菌が増殖し、たんぱく質を分解します。その際に揮発性のガスが発生し、硫黄のような腐敗臭を伴う化学物質へと変化するのです。 これは例えるなら毒ガスのようなもの。単に臭いというだけでなく、口の中の健康な細胞にまでダメージを与える要因になりかねないので注意が必要です。 特に高齢者や病気などによって飲み込む力が低下している人などに気を付けてもらいたいのが、舌苔が原因となる誤嚥性肺炎です。誤嚥性肺炎は、唾液や食べ物などと一緒に細菌が誤って気道や肺に入ってしまうことで起こります。 口の中の死んだ細胞はまず舌の上の面に集まり、細菌を繁殖させます。放置していると喉に近い部分に多くの細菌が存在している状態になり、飲み込む力が低下している場合などは誤って気道や肺へと吸引されてしまうリスクが高くなると考えられます。口臭や誤嚥性肺炎の対策として、今日から舌みがきを習慣にしましょう。 舌みがきは起床時、3~4回かき出すだけでOK 舌みがきの主なポイントは次のとおりです。 1 舌専用のブラシを使用する 舌表面はやわらかく繊細なので、歯ブラシでこすると傷つける恐れがあります。舌みがき専用のブラシを使いましょう。歯みがき粉をつける必要もありません。 2 舌の奥から手前にかき出す 舌の前のほうから奥へとブラシを動かすと、喉にあたって吐き気をもよおしたりする場合があります。こうした嘔吐反射を防ぐためにも、舌の奥から前に向かってやさしくかき出しましょう。 3 かき出す回数は3~4回で十分 舌表面の汚れは、舌専用ブラシで3~4回程度軽くかき出す程度できちんと落とすことができます。あまり回数が多いと舌を傷つける原因になるので気を付けましょう。かき出した後は水でぶくぶくうがいをして、口の中をしっかり洗浄することが大切です。 舌みがきを行うタイミングは朝食前がベストです。就寝中は唾液の分泌が減ることで細菌が繁殖しやすい状態になります。そのため、起床時の口の中は驚くほど汚れています。もちろん舌も例外ではありません。 舌全体に細菌が付着した状態のまま朝食をとると、食べ物と一緒に細菌を飲み込んでしまう可能性があります。前述の1~3の簡単な方法でOKなので、ぜひ毎朝のルーティンにしましょう。 なお、歯みがきは毎食後に行うのが基本ですが、舌みがきの場合は朝の1回だけで舌苔予防につながります。もし舌の汚れが気になる場合は、夜にもプラスするとよいでしょう。ただし、あくまでも「こすらない」「回数を増やし過ぎない」ようにすることが大切です。 自然の洗口剤、唾液の分泌も大切に 舌みがきで舌表面を清潔に保ち、舌苔がたまらないよう予防すると同時に、食事の内容にも気を付けてみましょう。 食べ物でこすれることで舌に汚れがつきにくくなりますが、あまり噛まなくても飲み込めるようなやわらかい料理や食品では、舌表面の凸凹に入り込んだ汚れを除去することがなかなかできません。 おすすめは食物繊維を多く含む野菜類です。特によく噛む必要のある生野菜などは、咀嚼することによって唾液の分泌が促進されやすく、野菜に含まれる繊維質によって物理的に舌の汚れを自然と取り除くことができるといったメリットがあります。 唾液は“自然の洗口剤”といえるもの。唾液によって舌は洗浄されているのです。さらに、唾液に含まれる IgA(免疫グロブリンA)という抗体には、細菌やウイルスなどの異物から体を守る働きがあるといわれています。 口の中が乾きやすいという自覚症状がある場合はこまめに水分補給をしたり、耳の前やえらの下、あごの下など唾液が分泌されやすいポイント(唾液腺)を指の腹でやさしくマッサージしたりするとよいでしょう。緊張やストレスなども唾液の分泌を低下させる要因なので、できるだけリラックスする時間をもつことも大切です。
「最近、物忘れがひどくなった」「家族が突然、取り乱すようになった」など、つい認知症を疑ってしまう症状があります。しかし、認知症と似ているものの違う病気ということも。 認知症と似た病気について、品川駅前メンタルクリニック院長の有馬秀晃先生に伺いました。 認知症とうつ病の物忘れの違い 認知症と似た病気としてまずあげられるのが、うつ病です。もの忘れはうつ病でもあらわれますが、認知症の記憶障害とは異なります。うつ病の物忘れは、記銘力(新たな事柄を覚えること)の低下です。たとえば、新聞を読んでもなかなか頭に入らず、時間をかけて読んだのに内容を覚えていなかったり、仕事で打ち合わせをしたのに聞いたことが頭に入らず、結局覚えていなかったりします。一方、認知症の場合は既知の事柄の記憶そのものが抜け落ちてしまいます。例えば、朝食で何を食べたかを思い出せないだけではなく、食事をとったこと自体を全く覚えていません。 うつ病の原因はさまざまですが、ストレスが誘因となることは少なくありません。ストレスの中でも、うつ病の引き金になりやすいのが、大切な人やものを失う喪失感、環境の変化、人間関係のトラブル、健康面や経済的な不安などです。ストレスを感じると、落ち込んだりイライラしたりしますが、集中力も低下し、もの忘れを起こすことがあります。真面目で几帳面、責任感が強い人ほど、ストレスを感じやすく、うつ病になるリスクが高いといえます。 認知症と見分けが難しいせん妄 せん妄も認知症と間違われやすいといえます。せん妄とは、主に高齢者に見られる意識障害の一種です。症状としては、意識が曖昧な状態で興奮したり、怒ったりして不穏な様子になります。実際にないものが見えたりすることもあります。高齢者の場合、たとえば入院などで生活環境が突然変わった際にせん妄状態になることがあります。症状は急に出現して日内変動も大きいですが、あくまでも一時的なものです。認知症では、こうした症状は緩徐に出現して持続的で徐々に悪化しますが、ただのせん妄の場合は数日以内に改善し、また、元の生活に戻ればそのような意識障害は通常起きません。ただ、認知症の周辺症状としてせん妄が併存していることもよくあり、見分けるには専門医の診断をあおぐのが賢明です。 認知症ではないただのせん妄症状は、突然の環境の変化が誘因となることが多いです。一般に、高齢者は環境の変化への適応力が下がるため、現実検討力が低下し、脳が一時的に混乱しやすくなります。また、飲んでいる薬の組み合わせによってはせん妄が誘発されることもあります。 ただの物忘れなら自覚できる 病気ではありませんが、正常範囲の物忘れも、認知症と間違われることがあります。年齢を重ねていけば、誰でも記憶力は低下します。たとえば、人の名前がなかなか出てこなかったり、物を置いた場所がわからなくなったりするなどです。でも、こうした物忘れはほとんどが後で言われれば「そうだった、忘れてた」と思い出しますし、忘れたことの自覚も普通はあります。一方、認知症による記憶障害は物事を忘れていることの自覚さえなく、人から指摘されると取り繕うような答え方をします。さらに、財布の場所がわからないといったときに、「隣の人が勝手に入ってきて盗んだに違いない」などと訴えることもあります。忘れていたことを自覚できているかどうかは、ただの物忘れと認知症を区別する大きなポイントです。 治療法とセルフケア うつ病はカウンセリングも必要 記銘力障害などを伴ううつ病の治療は、薬物療法とカウンセリングが基本です。うつ病の背景には脳科学的な病理がありますので、それを治すには抗うつ薬などで脳神経を修復する必要があります。個人差はありますが、1〜2週間で効果があらわれてきます。さらに、うつ病には「必要以上に悲観的になる」「白か黒かでしか考えられなくなる」などの心理的病理も伴うため、カウンセリングによってこうした認知の歪みを修正する必要もあります。カウンセリングは臨床心理士や公認心理師などの専門家にしてもらうべきでしょう。 複数の趣味でストレスを発散 また、うつ病のセルフケアは、気晴らしと適度な運動が大切です。ストレスを溜め込まないためには、趣味などの気晴らしで発散します。趣味も一つだけでなく、体を使うことと、頭を使うこと、一人でやることと、誰かと一緒にやることなど、バリエーションがあるのが理想です。たとえば、テニスやゴルフ、ジョギングなどの有酸素運動と読書、おしゃべり、食べ歩きなど、興味のある趣味を組み合わせて楽しむといいでしょう。 せん妄は家族も一緒に対応を 前述のように高齢者は環境の変化への適応力が下がるため、一時的なせん妄症状を起こしやすいです。根本的な対策はありませんが、生活環境の変化が予想されるときは本人と家族が「高齢で適応力が下がっているので、意識が不穏になるリスクがある」と認識しておくべきでしょう。また、一般に高齢者は持病などで複数の薬を服用していることが多いため、薬剤によるせん妄の誘発は常に頭に入れておき、かかりつけ医にきちんと相談するのがよいでしょう。 物忘れはあまり気にしない 物忘れ対策には、メモが役立ちます。重要なことはすぐにメモをとる習慣をつければ、物忘れを減らすことができます。予定などは書き込み欄のあるカレンダーや、手帳にすぐ書くようにします。また、年をとれば、誰でも忘れっぽくなるので、ただの物忘れであれば必要以上に心配して気に病まないことも大切です。 出典 「うつ病の人に言っていいこと・いけないこと」(講談社・有馬秀晃監修)
Ung thư dạ dày là hiện tượng các tế bào cấu trúc bình thường của dạ dày trở nên bất thường đột biến và tăng sinh một cách không kiểm soát, xâm lấn các mô ở gần (xâm lấn cục bộ) hay ở xa (di căn) qua hệ thống bạch huyết. Đây là một trong những ung thư phổ biến trên thế giới, tỷ lệ mắc đứng thứ 3 ở nam và thứ 4 ở nữ. Tỷ lệ mắc chuẩn theo tuổi của nam giới gấp 2 lần nữ giới.